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マスターのこと

2009年07月22日

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21歳から23歳くらいにかけて、
西新宿のバーで働いていた。

当時60代半ばだったマスターは、
絵に描いたような“破天荒人生”を歩き、

「フランスでロールス運転しながら女を抱いた」

が、いろいろある武勇伝のうちの登場回数のトップで、
近づくといつも「ペルノ」というフランスのリキュールの香りがした。

そして6年前の冬に火事で
あっけなく逝った。

客を選び、
機嫌ひとつでケンカして出禁客リストの数を増やし、
もっと機嫌が悪い日には杖をふりまわして暴れた。

このままこういう仕事していこうかな…と
私は半分くらい本気で思ってた。

酔っ払ったお客さんと話をするのは嫌いじゃなかったし、

それに、
「自分で書かせるのは半年後とか」
と面接で言われることに飽きていた。

お店のお客さんに新聞記者がいて、
あるとき彼と話をしながらマスターが私を振り向き、

「物書きになりたいのがいるって話したのはあいつ。
 いつか俺の伝記書いてもらうんだ。な?」

と言った。

な? と言われて、

反射的に

「うん」

と答えてしまった私は、

その翌日に、ほとんど金髪だった頭をごまかして、
某社の入社試験を受けに行った。

その会社は「書かせるのは半年後」とは言わなかったし、
社長は面接中に、
ほとんどルール違反解答みたいな私の作文を
机の下で読みながらウケていた。

半年後どころか1週間後、
私は山積みの原稿に真っ青になっていた。

いまなら伝記くらい何冊でも書いてあげるのに。

仕事がヒマになると、
ときどきそうやってマスターのことを考えます。

Asa.s

※09年7月現在、マスターの伝記が書ける状況ではありません。。。



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