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「あの」ってやっぱり

2016年03月04日

あの夏


かなり昔、内田樹さんが、村上春樹は作品で「あの」という連体詞を
過去の共有感を引き出すうえで非常にうまく使っている、
と指摘している文章をnippoに書いた気がするんですが、
またもや強烈なものを目にしてしまいました。

関川夏央さんが『現代短歌 その試み』
で引いている小野茂樹という歌人の歌です。


  あの夏の 数限りなき そしてまた 
  たつた一つの 表情をせよ


有名な歌とのことですが、詩歌には疎いので恥ずかしながら
初めて知りました。

個人の(たぶん恋愛の?)体験を詠んでいながら
ものすごく普遍性がある。
たぶん、読んだ人は、いろいろな自分の経験を重ねあわせられる。
そして、痛切な回顧・懐旧ではあるけれども、
その瞬間を永遠のエネルギーにして生きていく前向きな感じがある。

年史でも、こういう印象を与える書き方ができれば、と。
そんでものすごく無茶な望みをいえば、全体でこういう印象を与える
年史がつくれれば、とも。
関川さんの表現でいえば、
「失われた時は『あの夏』という平易な、しかし浸透力のある言葉とイメージとで、
神速に凝縮する」


「まず自分の下腹を凝縮せーよ」
というご指摘は十分承知の上で励みたいかと。


moon hill



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