FC2ブログ

一冊の周辺 ― 『セントラル・パーク事件』

2014年04月04日

IMG_3183

昨年だったか一昨年だったかの夏前に
妙に切実にひとりになりたいと思っていた。

細かいことは忘れた気もするけれど、
まぁ、いろんなことがあって
毎日の会話の数がなんとなく多過ぎた。

働いている街の駅を降りても、
住んでいる町の駅を降りても(暇な時期だったらしく毎日迎えの車が停まっていた)、
常に“待たれてる感”があった。

仕事が忙しい時に南の島を空想することはよくあるけれど
それは単に「さむいのやだ」「のんびりしたい」ということだし、
もともとひとりの時間を大切に思うほうでもない。

だから、それは、それなりに非日常の状況だったのだと思う。

たまに移動時間や寝る前に
iPhoneで「秘境」と入力して画像検索して出てきた写真を眺めたりした。
知っている生きもののいない場所が、魅力的に見えていた。

そういう時に、1泊で離島へ行く仕事があった。
ひとりでやらせてもらっている仕事だった。
時間刻みのスケジュールが送られてきたので
アテンド付きの2日間を覚悟した。
ぜいたくに思うべきだけれど、そういう時期だったので重かった。

そうしたら、
「送ったスケジュールはあくまで案なので好きに過ごしてください」
と言われた。
打ち合わせと夜の食事以外はフリーということだった。

離島でひとり。

夢にまでみた、というか、画像検索してまで妄想した状況だった。

ひとりで飛行機に乗り、
空港に降りてもひとりだった。
初めて訪れた中核都市のターミナル駅のビルで昼ごはんを食べて、
知らない名前の在来線に乗って港に着き、
そこから船に乗った。

広い露天風呂にひとりで入って、
豪華な客室をもてあました。

翌朝、ロープウェイに乗って山に登った。
平日の朝にロープウェイに乗る人は珍しくて、
前後10台に誰もいなかった。
落ちてもしばらく気づかれないな……と思うと、さみしくて自由だった。

その出張の時に持っていたのが、
『セントラル・パーク事件』だった。

主人公のビンゴは、嬉々として人の人生を背負おうとしていた。
ハンサムという名前の相方のことも、
保険金目当てに誘拐した老紳士のことも、殺人犯のことも。
誰かの人生に積極的にかかわり、
かかわるということはその一端を背負うということであると、
なんの気負いもなく理解し、その責任を軽々と引き受けているように見えた。

また船に乗り、飛行機に乗って帰ってきたら、
ひとりに焦がれる気持ちは薄れていた。
離島のおかげだったのか、ビンゴのおかげだったのかわからないけれど。


『セントラル・パーク事件』 クレイグ・ライス (ハヤカワ・ミステリ文庫)



最新記事