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2人のビジネスマンの話

2013年10月21日

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ある企業の海外子会社の元責任者にインタビューした。
その人が赴任した当時、現地法人は業績不振。
最初の仕事が、株主総会で無配を了承してもらうこと。
多くの現地株主は冷たい視線だったが、
創立時からの年老いた現法会長(現地筆頭株主でもある)は、
「口は挟まないから、しっかりやって立て直してください」
と励まし、創立時の東奔西走ぶりなどを話したという。
その後も、表立った支援をするわけではないが、
老会長は精神的支柱として現法の責任者幹部社員の支えとなった。

責任者はさまざまな手を尽くして現法社員の士気を高め、
日本本社からの圧力にも、現法の存在意義と頑張りを説いて粘り、
見事、立て直しに成功する。


苦労した現法社員に報いるため、責任者は日本への旅行を企画、
社員全員が日本を楽しみ、さらなる努力を誓って気勢をあげた。
「ただ、残念ながら老会長だけは体調を崩していて、DVDでメッセージを……」
とそこまで話して、元責任者はしばらく言葉に詰まった。
旅行から1カ月余で、老会長は亡くなったという。
「黒字にして、ささやかでも復配するのが目標で、
もう少しで実現するところまできていたので、
それだけが心残りで……すみません」
こちらも質問しかねる時間が数十秒続いた。

老会長が亡くなったのは、もう4年以上前のこと。
インタビューした責任者は、今は別の現法社長になっている。
変化の激しい昨今のビジネス流儀でいえばとうに「昔話」。
それでも、口調からは、今でも本当に無念に思っている感じがうかがわれた。
「君自身の人格ならびに他のすべての人の人格に例外なく存するところの人間性を、
いつでもまたいかなる場合にも同時に目的として使用し
決して単なる手段として使用してはならない。」
カントの言葉がよぎる、数少ないインタビュー。




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