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葡萄色の灯

2012年10月10日

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台湾での3泊4日のあいだに、
心がぱあーっと浮き立つ瞬間が何度もありました。
(マンガだと、主人公の目が急にきらきらして、背景にお花が飛んだりする、あの瞬間です)


初搭乗の国際線で、ハローと声をかけられたとき。
(楽しみにしていた「フィッシュオアビーフ?」はありませんでした)

円卓に乗った東坡肉の、こんもりとした背中を見たとき。
(角煮フリークなもので)

清代の林家一門が築いた名園で、回廊の中に蓮池を見つけたとき。
(まさに一幅の絵としたいような眺めでありました)


なかでも、われながら予想外に
ぱあーっとなったのは、
台北からほど近くの新北市中和区で訪れた
服飾家鄭さんの工房(兼アトリエ)でのひとこまでした。

20年以上にわたり、
台湾の素材を大切にしながら服作りを続けているという鄭さん。

大きな衣装棚にずらりとかけられた
シャツやズボンは、よけいな装飾が一切なく、とてもシンプルなものです。
ただし、
水墨画の妖精(なんだそれは)と思わせる淡色から
ブータン国王妃を連想せずにはいられない鮮やかな原色まで、
見事なグラデーションをなしているので
同じ型であっても発掘する楽しみがあります。

鄭さんは、どこからともなく
(上の階にもアトリエがあるのでたぶんそこから)現れると、
シャツに袖を通すすずきさんの肩に、
ショールを1枚、2枚と乗せ
迷いのない動作で「着付け」をしました。

くっきりとしたピンクのシャツに、
これまた鮮やかな黄色に橙色のショール。
これが、合うんですねぇ。

見とれていると、次に鄭さんは、
ワンピース(という言葉はしっくりこないのですが…ロングドレスも違うし)を
持って現れて、私に着付けをしてくれたのです。
色は、葡萄色。

鏡の前に立ってみると、あら素敵!(自分で言います)
シャツやズボンと同じく、シンプルなラインで構成されているそのワンピースは、
身に着けると何とも女性らしいシルエットを作り出しました。
いやぁ、うれしかったなあ。


え~…「フリ」が長くなりましたが、
鄭さんが、さっと着付けてくれた葡萄色のワンピースは、
私のなかで静かなる野望の灯となりました。

あの一瞬で、自分でもびっくりするくらい心が弾んだこと。
あんな体験を、
いつか、自分の一篇、いや一文で、誰かに……
そんな野望です。

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sora



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