FC2ブログ

7つの短編

2012年03月19日

7-2

空想、思い出、勘違い、希望。
不確かかもしれないものの、いとおしさ。


[ 7つの短編 selected by 飛松水音 ]

 「また春が来る」 (伊集院静『伊集院静の流儀』)
   
   二人とも、その美しさに声が出なかった。
   「綺麗で、まぶしいの」弟が吐息混じりに言った。


 「馬鹿一」 (武者小路実篤、同題)   

   僕達が気がむしゃくしゃしたり、いろいろ不愉快なことがあると、
   馬鹿一の処につい足が向くのだ。


 「オオカミ」 (星野道夫『旅をする木』)
   
   生き物の気配など何もないこの世界で、
   自分と一羽のホオジロが共有した時間が何か可笑しく思えたのです。


 「わたくし率 イン 歯ー、または世界」 (川上未映子、同題)
   
   わたしは歯が痛くなったことがないのやから、
   そこに痛みを入れてしまえば、わたしはどっこも痛くなくなる


 「おれたちのもらった土地」 (フアン・ルルフォ『燃える平原』)
   
   おれたちがもらった土地は、あのずっと上のほうにあるんだ。


 「レンブラントの帽子」 (バーナード・マラマッド、同題)
   
   「いったい、あの野郎、おれになにをしやがったってんだ?」
   彼は声をあげてどなったが、そのあとでは、
   「いったいおれはおれ自身になにをしたんだ?」と自問した。


 「大佐に手紙は来ない」 (ガルシア・マルケス『悪い時 他9篇』)
   
   郵便局長は肩をすくめた。「間違いなく来るのは死だけですよ、大佐」

miotobi



最新記事